なによりも自分のためのブログ

これまでに考えてきたこと、ふと思いついたことを発信していきます。

「身になる読書」の方法

僕は大学生になってから頻繁に本を読むようになりました.しかし,本を読んだ事自体に満足してしまい,そのインプットをうまく活かせていませんでした.本は読んでみたものの,特に自分自身に変化をもたらしてはおらず,「身になる読書」をできていませんでした.しかし,せっかくお金を出して買った本を,有限な時間を使って読むのであれば,できるだけ投資対効果を上げていきたいな,と徐々に思うようになりました.もちろん,気になる本を気の向くままにマイペースに読むことは今でも好きなのですが,仕事で必要な知識を得るための読書である場合,そんな悠長なことを言ってはいられません.どうしたら読書によって得た知識を自分のものにして使いこなし,「身になる読書」とすることができるのか,そのノウハウを整理しておきたいと思います.

(読書前)目的の明確化と内容に妄想をする

目的を明確にして、言語化しておく

何事も取り組む際には目標の設定が重要となります.読書の目的を明確にして言語化をしておくことで,漫然と本を読んでみていざ読み終わってみると,結局何もわかった気がしない状態になることを避けることができます.そもそも1冊の本には多くの情報が詰め込まれているので,本当にそのすべてをくまなく理解することは難しいはずです.すべてを理解しようとすれば,当然時間もかなり必要になりますし,理解を仕切れずにわかっていないことばかりだと途中で落ち込んでしまい,モチベーションを低下させてしまうこともあり得ます.目標を設定しておくことで,たとえすべての内容を理解できなくても,ここだけはわかればいいというポイントが明確になるので,必要以上に時間をかけすぎることを回避し,読書中の挫折も避けることができます.

目次から内容を妄想する

本には目次があり,目次のタイトルを一通りみるだけでも,なんとなくその本がどんな事を書いているのかを想像することができます.本文に進む前に,目次からどんなことを書いてあるか、自分の目的としていることを対する答えはどんなことになりそうかを、妄想し,目的やその本の中で展開される主張についての仮説を事前に持っておくことを意識しています.これは仮説思考的なアプローチであり,仮説を事前に持って読み始めることで,仮説をベースにしながら読書により新たにインプットされる情報を整理していくことで,理解のスピードを上げることができます.

 

(読書中)既知の知識との紐付けと振り返り

既知の知識と紐付けながら、具体的なイメージを膨らませる

僕の以前の悩みとして,読書をした内容が頭に全く残らないということがありました.この対策として,自分の頭の中にすでにある知識と紐付けながら、具体例をあげながら理解していくことが挙げられます.すでに自分の中に定着している知識や経験と紐付けながら,新しいインプットの内容を理解していくことで,知識が具体化されていき,それによって記憶のフックが増えていくので,記憶に残りやすくなり,いざ使える場面になった時にその知識をすぐに引っ張り出せるようになります.

定期的に振り返るために、空き時間を作る

数学のテスト中にこまめに計算ミスがないか見直したり,仕事の途中経過を適宜振り返ったりすることが重要なように,読書中も章末ごとに読んだ内容を振り返ることが重要です。一旦,本を置いて,それまでの内容を反芻します.そして,短時間の休憩をとり,インプットを一旦止めて,無意識下での情報の整理を促します.休憩をしている間も,脳内ではインプットされた情報が徐々に整理されているらしく,こうした脳の働き方の影響もあって,「ひらめきはリラックスしているときに起こる」といったことが起こるようです.

 

(読後)目的の達成確認とアウトプットによるインプット

目的の答えを言語化する

本を読む前に設定した目的に対する回答を言語化しておきます.どんな目的は達成できたのか,目的に対する答えはどんなものだったのかを整理しておくことで,ただ読んだだけの状態から脱却できます.合わせて、新たな気づきや面白いところを書き出しておくことで,読書によって得られた学びを定着させやすくします.

各種のレビュー記事を見ながら理解の確認と深化

ブログやアマゾンレビューなどをみながら,自分の読書の理解と他者の理解を比較していきます.他者の理解や意見と照らし合わせることで,自分の誤解を修正しつつ,適宜批判もすることで自分の理解をより深いものにしていきます.

ブログを書く

インプットした知識は,アウトプットすることでより強くインプットされます.学びや気づきをまとまった文章にしてブログにアップしていく過程で,他者の視点を意識しながら,自分の理解をブラッシュアップしていくことができます.重要なポイントを3点だけまとめるだけでもいいので,インプットを放置せずに,すぐにアウトプットしてみるこが 重要となります.

上司の期待値を正確に掴む

はじめに

仕事上,上司から資料作成を依頼されることは多い.リサーチしたデータを整理したExcel資料,クライアント先で上司がプレゼンに使うスライドなどがこれまでに作成した資料である.しかし,いざ作り始めてみると「なんとなく」資料の完成度に疑問を持ったり,上司に提出すると手戻りが生じてしまい,時間を多く要してしまうケースもある.これは,上司がどんな資料を作成してほしいと思っているのか(期待値)を把握できていないことに起因している.そこで,今回は,上司からの期待値を正確に汲み取り,それらを反映した成果物(資料)を作成するためのポイントについて考えていきたい.

 

WHY・WHAT・HOWを掴む

期待値を掴んだ上での成果物を作成するには,資料作成のWHY・WHAT・HOWを掴むことが重要である.もう少し具体的に言えば,「作成目的の明確化」,「構成要素の具体化・すり合わせ」,そして「利用方法/状況の把握」である.これら3つについてその内容を説明していく.

 

作成目的の明確化

まずは,なぜその資料を作成するのかを知る必要がある.資料の作成目的を把握すれば,気にするべきポイントが明確になっていく.
例えば,新サービス開始の意思決定のために使うのか,それとも今後の議論のための頭出し用の資料なのか,クライアントでの会議の社内打ち合わせのためのなのか,など目的は多岐に渡る.目的によって,資料の表現や分析の粒度や注力すべき点は変わってくる.例えば,トップマネジメント向けの資料であれば,詳細な向上や店舗のデータよりも,全体感を掴んで全社的な意思決定がしやすい事業別程度の粒度での分析を行った方が良い,といったことがアイディアをして挙げられる.また,文体(です・ます/である,敬語表現など)の選択もこうした目的別に調整する必要がある.部署内のインターナルな会議用であれば,端的な表現で箇条書きレベルの表現でよくても,客先の経営層向けの資料であれば,丁寧な表現で文章を作成したほうが良い.こうして事前に目的を把握して資料作成のポイントを想定しておくことで,無駄なところを必要以上に気にしたり,時間切れになって気にすべきポイントに手が回らなくなるの を防げる.

 

構成要素の具体化・すり合わせ

また,資料にどんな情報をどんな形式で盛り込めば良いのかを明確化しておくことも必要となる.どんなことを情報として盛り込めば良いのか,グラフがほしいのか詳細なデータがほしいのか,視覚的に訴えるチャートが良いのかそれとも厳密にテキストで内容を表現してほしいのか,と構成要素(情報の種類と表現方式)の選択も骨が折れる作業である.このように必要と思われる情報とその表現方式を書き出し,取捨選択しながら検討をしていくプロセスを踏んでいくことが求められる.そして,これらの構成要素は新人の頃はすぐにはに思いつかないので,過去に上司が作成した資料などをに目を通しておき,具体的な成果物のイメージができるようになっていくことが必要である.そして,成果物イメージができた段階で,手書きのラフ画でもいいので,上司に早い段階で共有して認識のすり合わせをしておくことで,資料の手戻りを防ぐことができる.そ
して,一旦合意を得ておくことで,迷いなく仕事を先に勧めていくことができる.

 

利用方法/状況の把握

最後に,作った資料がどのような状況で利用されるのかを把握しておくことも重要である.会議室でプロジェクターに投影されて資料されるのか,どのくらいの広さの会議室なのか,印刷して配布されるのかによって,フォントサイズなどを変更しておくことが必要になる.モノクロでも印刷ならば,印刷時に情報が消えてしまわないように色の選択にも気をつける必要がある.

 

おわりに

資料作成のWHY・WHAT・HOWを掴むことが,上司の期待値の正確な把握につながる.しかし,期待値通り以上の成果を出すことで,自分の付加価値をだし,他の社員との差別化をしていくことができる.そのためには,WHY・WHAT・HOWを踏まえた自分なりの工夫が必要となる.

読書録 無敵の思考

2ちゃんねるの創設者,西村博之さんの書籍を拝読しましたので,その読書録を記しておこうと思います.本を読む中で僕がポイントだと思った点を3つシェアします.

 

無敵の思考 ――誰でもトクする人になれるコスパ最強のルール21

無敵の思考 ――誰でもトクする人になれるコスパ最強のルール21

 

 

「自分のルールのもとに生きる」

日常生活を過ごしていると,多くの選択肢から選択を行う意思決定の機会が70個ほどあり,その一つ一つの意思決定には,情報の収集とその整理,そして判断といったプロセスが求められ,エネルギーを多く消費する.スティーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグがいつも同じ服を着ていたのは,こうした日常生活の意思決定によって消費するエネルギーを節約し,ビジネス上の意思決定に注力するためだったというエピソードは有名だ.自分のルールをきめて置くことで機械的な判断ができるようにしておくことで,より重要な意思決定に多くのエネルギーを使えるようにしておくことができる.

 

「仮説思考を鍛える」

物事をスムーズに理解したり,短時間で核心に到達するには,事前に自分なりの仮説を持っておくことが重要となる.例えば,他人とのコミュニケーションでは,自分の質問にたいする答えを事前の仮の答えとして持っておく.その上で,質問をすればより自分の理解を深める質問をすることができる.質問に対する回答の結果,仮説が間違っていたならばそれを修正して,また新しく精度の高い仮説を立てて,再度コミュニケーションを取っていく.そうしたプロセスを経ていくことで,短時間で密度の高いコミュニケーションが可能になっていく.

 

「考え方を相対化する」

自分の考え方は,これまでの自分の経験や直近の出来事,感情に大きく左右されてしまう.また,限られた情報と時間の中での考えなので,見落としている視点もある.
こうした偏った考え方のもとでは,過度に自分の考え方を絶対化してしまったり,極端に自分の現状を悲観してしまったりすることになる.異なる立場や視点から目の前の出来事や自分自身を解釈し直して見ることで,また異なる見え方ができるようになっていく.具体的には,極端な状況を考えてみることがあげられる.最悪の状況を想定してみることで,それよりはマシだと思えるようになることもある.また,外国の日本とは異なる価値観に触れることで,これまでは当たり前だと思ってきたことを疑うことができるようになる.このように,極端な状況や自分とは違う立場を想像したり,体験したりすることで,偏った自身の考え方を相対化していくことができる.

 

振り返りの重要性

仕事をしていて痛感するのが振り返りの重要性です.
時間に追われる日々が続いていると,自分の現状を冷静に見つめ直すことが難しくなっていきます.
しかし,自分の現状と課題を客観的に把握することができなければ,自身の大きな成長は望めません.
現在の作業に無駄はないのか,一日の過ごし方は自分をベストな状態に維持できるものなのか,などなど様々な課題があるはずです.
一旦,冷静にならなければこうしたことに気づくことは難しいです.
自身を客観視し,生産性を向上させていく,成長を促進させていくために必要となるのが「振り返り」です.
一日を振り返り,どんなことをしたのか,どんな反省点があったのか,改善できそうなことはないのかを,整理する時間が必要です.
振り返りに必要な要素は大きく次の4つだと思います.

 

①取り組んだタスクの整理
②反省と課題の抽出
③課題の原因の明確化
④改善のためのアクソンプラン策定

 

この時にポイントになるのは
・言語化をすること,
・課題は原因まで考察すること,
・改善のためのアクションプランを具体的に定めること,
です.


特に3つ目が重要であり,すぐ明日から取り掛かれるぐらいの粒度までアクションプランは落とし込んでおくことが重要です.
行動が変わらなければ,自分が変わったことにはなりません.
ただ,課題を整理して,原因を分析しただけでは何も自分が変わったことにはなりません.
自分の行動を変えるためにどんなことをするのかを明確にするのが,アクションプランの策定です.
このアクションプランは小さなこと,些細なことで良いのです.
それをすぐに実践していき,また振り返りをしてよりよりアクションプランにブラッシュアップしていくことが重要です.
行動を変えるための振り返りをしていくことが,自身の成長には不可欠です.
こうした日々の小さな改善が,大きな差を産んでいくのだと思います.

思考は心理状態に依存する

最近よく思うのは,精神的に不安定なとき(不安なことがあるとき,焦りが有るとき)は,思考が浅くなり,頭の回転が急激に遅くなるということです.気になることがあると
人間はなかなか目の前のことに集中できなくなってしまいます.

人間には感情がある以上,この感情をうまくコントロールしていかなくてはなりません.
その際に,メモ書きは有効なツールであり,これまで何度も助けられてきました.
しかし,最近は,メモに言語化をしていっても何故か不安を拭いきれず,なかなか思考のスピード・深さ共に改善ができていない状態にあります.
そこで,原因を考えてみたところ思い至ったのが,「具体化の不足」です.
人が不安になるシチュエーションの一つに,「何が起きているのかがよくわからないとき」が挙げられます.
自分が,今現在どういう状況にあるのか,何に直面しているのか,何が問題になっているのか,このままだとどんなまずいことがあるのか,などなど,一旦ドツボにはまると.
曖昧な状態で様々な懸念が爆発してしまい,不安で一杯になってしまいます.
具体化がされていないので,不安の原因もわからず,対策もできません.
これでは不安な状態を改善することはできないのです.
そこで,必要になるのが「具体的には?」という問いかけを自分自身にすることです.
曖昧でふわふわとした状態でぐるぐると悩んでいた状態から脱出するには,思考のレベルを具体的なレベルに引きずり込む必要があります.
このパワーワードを使うことで,改善が期待できると思われます.
自分も意識的にこの問いかけをしていこうと思います.

「言葉にできる人」の話し方

 

「言葉にできる人」の話し方の読書録です.

 

今日では,SNSの普及によって,コメントを発信したり,求められたりする機会が多くなり,自分が疎い分野について意見を求められることもままある.そうした局面で,「わかりません」の一言で会話を終わらせてしまうと気まずい雰囲気になってしまう一方,気の利いたコメントができれればその人に対する注目度は大きく上がる.このように,会話の流れを止めずに,常に安定感のあるコメントをする能力が必要とされている.

これまでを振り返って,知識があるはずのテーマなのに自分の考えをうまく言葉に出来ず,悔しい思いをしたことはないだろうか.知識はあるはずで,なんとなくの考えは頭に 浮かぶものの言葉にできず,会話の輪に入れないまま終わってしまう.これは,自分の考えを会話に沿う形で作文をする力,「言葉化」する力が不足しているために起きている .言葉化はコメント力が要求される今日では重要な能力だと言える.

知識があり言葉化もできる状態にあれば,会話の中で気の利いた発言をすることができ,一目置かれる.しかし,常に知識があるテーマについてコメントを求められるわけでは ない.未知の分野についてコメントを求められるケースも多く有る.こうした際に「わかりません」の一言で済ませてしまうと会話が途切れてしまい,気まずい雰囲気になって しまう.知識がなくとも会話の流れを止めず,むしろ会話を盛り上げていく「間に合う」コメントをできることが望ましい.

間に合うコメントをするために,「~~感」というやや幅のある言葉を使う方法がある.また,知らないことを逆手に取って好奇心を示しながら知識のある人に質問することで ,会話を盛り上げていくこともできる.知識がなくても,会話の流れを止めずに,盛り上げていくことができる.

知識があるのに言葉化ができない人は知識をアウトプットする機会を多く持つことで言葉化ができるようになっていく.知識がない場合でも,前述の方法をとることで,会話を スムーズに進めていくコメントができる.言葉化の力を養うことが重要な課題だ.

「ポスト大学生」制度による新たな挑戦の実現―納得感のあるキャリア形成に向けて―

1 はじめに

 「とりあえず大学院に進学するよ。」文系学生が就職活動解禁を前に焦りを感じる中、理系学生がしばしば口にする発言だ。工学部で機械工学を学んでいた私も例外ではない。入学当初からなんとなく進学を前提としていた。3年生の夏にふとこれまでを振り返ってみた。必修だから履修したアジアの歴史の講義では自分の価値観が儒教的な思想に基づいていることに気づき面白さを感じた。留学生との交流を通じて考え方の違いを知り視野が広がった。書店でビジネス書を手に取ってみるとビジネスのスケールの大きさに驚いた。大学主催の工場見学ではどの工程も迫力満点で感動した一方、その管理は理論に基づき緻密に行われており大学での学びが活きていることを知った。こうした多くの気づきを経て、とりあえず進学することに疑問を感じていた。ひょんなことから所属している大学院を知った。直観的にこれだと思った。間違った選択ではなかったが安直な選択だった。じっくりと自分の興味関心や適性と向き合った上で納得感をもって進路選択をするべきであったと思う。こうした私自身の体験から本稿の提言は生まれた。

2 「流される大学生」には4年間は短い

 四年制大学では1年生では一般教養を中心に学ぶ。また、専門科目を初歩的なものから学び、集大成として卒業論文を仕上げる。大学入学当初、学生は高校生の延長線上におり受動的な「生徒」状態を継続している(1)。「生徒化」している大学生は他律性と依存性を特徴としており(2)与えられるものをこなしていくだけであるため、いまひとつ学問の面白さを理解できない。なんとなく毎日に物足りなさを感じ、サークル活動やアルバイトに励みながら毎日を楽しむことを重視する。多様な価値観と触れることで新たに自分の適性や興味関心に気づきこれまで見向きもしなかった分野の本を手に取るといったことが起きる。この過程で「生徒」を抜け出しつつ興味関心の幅が広がると共に思考力や洞察力が養われていく。それに加えて研究を始めてみるとこれまで薄れていた自分の専門分野の面白さも再発見する。こうして面白いと思えるものが多くあることに気づき自分の歩むキャリアの選択肢が増えていく。しかし、その頃には就職活動解禁の号令がかかろうとしているのだ。理系学生であれば進学か就職の選択をしなければならない。ゆっくりキャリアを考える時間が欲しいからと言って休学するにも就職の時には不利に働かないのだろうかという不安が頭をよぎる。このように大学生の多くが環境や出来事に強く影響を受けて周囲に流されている現状がある。
 マイナビの2017年卒学生を対象に行った調査(3)では「なにがなんでも就職したい」と87.6%が回答した。就職に対する焦りと執着を感じる大学生の姿が読み取れる。その結果、強引に決めた就職先でミスマッチに悩むことも多く、厚生労働省(4)は平成24年3月新規学校卒業者が3年以内に離職した比率は32.3%に達すると報告している。また、多くが進学する理系学生もその進学理由は「興味を深めたかった」と52.3%の学生が回答する一方で「進学が当たり前だと思った」が41.9%に上り、能動的に自身のキャリアを考えているとは言い難い(5)。取材をした理系大学院生からは「進学するにしても一度は社会のことを知るべきだった」という反省の声も挙がった。
 単に現代の日本の大学生の考え方が甘い、時間の使い方が下手であるという結論で片付く問題ではないと思う。過去を振り返りあの時もっと勉強しておけばよかった、もっと違う世界に飛び込んでみればよかったという後悔は世代関係なく聞く声である。卒業後に自分探しのために長期間旅行をする北欧諸国と比べると大きな相違がある。頻繁に価値観を変化させながらも時間を費やすべき進路選択には時間をとれない「流される大学生」に対して、キャリアを見つめ直し新たな挑戦をできる環境を整えるべきだと考える。こうした背景から本稿では「ポスト大学生(Post Bachelor、以下PB)」制度の導入を提案する。

3 「ポスト大学生」制度の構想

 ドイツにはAusbildung(アウスビルドゥング)制度という働きながら専門学校に通う制度がある。日本の高卒に相当する人が就職を前にこの制度を利用してスキルの習得を図る。そして公的にその認定を得ることで社会的な信用を獲得することができ、就職の助けとなるそうだ。本稿でもこうした社会的な信用を得つつ自身のキャリアデザインを行える制度を提案したい。公的な認定を保証することでなかなか踏ん切りが付かない「流される大学生」の心理的不安を低減することができるはずだ。具体的には、学士取得後の就職あるいは大学院進学前の期間に「ポスト大学生(PB)」という新たな学生の身分を設けることから始まる。学部卒業前の時点でのキャリアの考え方や興味関心、PB認定後の活動計画等を踏まえて面接や書類で審査と認定を行う。このPBの期間に在学していた大学を離れ、例えば留学やインターンを行い、未知の世界と交わる。こうした中で自分の興味関心を新たにみつけたり、あるいは自分の強みや適性を発見したりする。内省や自己分析を繰り返しながら納得感をもって就職や大学院進学といった新たなキャリアを歩んでいくことを目指す。また、PBの在籍期間は各自が自由に決定できるものとする。自分自身が納得のいくキャリアの決定ができ、ベストなタイミングで各々の新たな挑戦を始めることができる。

3.1 PB制度で提供するチャレンジプログラム

 PB制度は新たな世界に飛び込むチャンスを提供する。自分の専門を飛び出して他専門という新たな世界に飛び込む「他専門チャレンジ」、学生としてではなく社会人として扱われるビジネスの世界に挑戦する「ビジネスチャレンジ」、国を越えて全く異なる価値観と触れる「異文化チャレンジ」である。以下、詳細を説明する。

3.1.1 他専門チャレンジ

 学部時代に学んだ専門科目とは異なる専門領域について知ることを目的とする。異なる大学を複数訪問しながら自分の見識は浅いものの興味のある専門領域の講義やゼミを選んで参加していくというものである。例えば、文系の学生がプログラミングやデータサイエンティスト関連の講義を受けたり、理系学生が経営や経済あるいは法律のゼミを受けたりといった具合である。東京医科歯科大学一橋大学東京外国語大学東京工業大学四大学連合で講義の機会を提供している。こうしたプログラムをPBも参加可能にすることで実現できると考えられる。ここで注目すべきなのは大学自体も複数を訪問することである。実体験から、大学も所在地域や扱う専門分野によって学生の雰囲気や考え方は異なる。多様な価値観と多く接点をもつことで自分の価値観を相対化していく。

3.1.2 ビジネスチャレンジ

 就職をする前に実際に働いてみる試みである。企業等が提供している長期インターンを通じてビジネスの実状や、業界の動き、あるいは働くことの意義を見出すことができる。こうした実務経験を積む中で自分の適性が発見できるはずだ。また、インターン先では自分のロールモデルとなる社員と出会う可能性もありキャリア形成の大きな助けともなる。不向きな点が分かったとしてもそれを基に自分のキャリアプランに活かすことができるため収穫となる。企業側としても時間をかけて判断した上で長期インターンに参加したPBにオファーを出せばミスマッチの少ない採用が可能になるはずである。

3.1.3 異文化チャレンジ

 大学4年間では興味がわかなかったり決断できなかったりした留学に挑戦できるのがこの制度である。必修の講義や卒業研究もないので金銭的目処が立った段階、自分に都合の良いタイミングで踏み出すことができる。しかし、多額の出費があるため経済的な制約は大きな障壁になる。そこで国内であっても異文化交流ができるように地域に暮らす外国人や留学生との交流会を設ける必要がある。また、文部科学省が提供するトビタテ!留学JAPANのようなプログラムが利用できることが望ましい。金銭的補助も充実しておりプログラム利用者からは経済的負担を感じずに異文化と触れて学びを得る機会をもつことができたという声も聞いた。こうしたプログラムがPBの活動の可能性を広げることができる。

3.2 キャリアメンター制と人材育成

 キャリアデザインでは納得感を得ていくことが重要である。過去を見つめ直すことで自分自身を知り、現在の自分の考え方や意思に素直に向き合う必要がある。そのためには腰を据えて冷静に自分を分析する時間も不可欠だ。そのサポートのためにキャリアメンター制を整える。キャリアメンターとはPBのキャリア相談に応えるパートナーである。キャリアメンターには多様な人材を揃える。前述のチャレンジプログラムにより企業等とのネットワークが形成され、トビタテ!留学JAPANプログラムのような官民協働の体制が整えば豊富なキャリアを持った人材を集めることができる。例えば、現場の第一線で活躍するビジネスマンや起業家などが考えられる。また、来たる高齢社会において退職後も社会への貢献の場を探す経験豊富なシニア層、PB制度が定着すればこの制度のOBやOGも強力な援助者になる。ただし、このメンター制の趣旨はPBの内省の場の提供であるため一方的にメンターの考え方を押し付けるようであってはならない。メンターの選抜や研修、PBからのフィードバックを通じてメンターの育成も重要となる。

3.3 PB制度を支えるサポートシステム

 金銭的サポートも重要である。公的にPBを学生と扱うことができれば、学部在学時と同様に奨学金や給付金の利用も可能になる。また、PB間の交流を図るコミュニティの構築も重要である。特定の大学に所属しないことで自由な活動ができる反面、安定した人との交流や相談の場が設けにくい懸念があるからである。その結果として情報収集の場も少なくなる恐れもある。そこで、PB間の交流会や留学やワーキングホリデーの案内、長期インターンの斡旋などを集約したWEBサイトの立ち上げが有効であると考える。新たな挑戦を促しその経験によって自身の視野を広げるチャンスを提供する。

4 PB制度の課題と対策

 PB制度導入の課題となるのは社会的な孤立とそれに対する不安である。本稿でアプローチの対象としている流される大学生はそれまでのキャリアで多数派と同じ選択をしてきているものと考えられる。PB制度を導入したとしても全く新しいPBという進路選択をするかは疑問が残る。制度的にはPBの意義や社会的な身分が保証されていたとしても実際の周囲の人間がその存在意義や価値を認めてくれるのか、といった不安を抱えるはずだ。また、PBになったときに就職者や大学院進学者から孤立しないか、PBの中でも孤立しないかといった不安がよぎるはずだ。そうした想定される課題や問題点に対して、インターンやメンター制によって企業を巻き込むことで企業からの理解を得たり、PB内での交流の場やそのインフラを整えたりすることが解決策となるはずだ。
 しかしPB制度に対して、単なるモラトリアムの延長だ、だらしない大学生を増やすだけだ、といった指摘はやはり挙がると思われる。こうした厳しい指摘に対しては時間をかけて実績を残していく必要がある。様々な挑戦や経験を通じてPB一人一人の能力的、精神的成長を促す。PB在学を通じて悩み、考え、行動を起こして挫折や困難を乗り越えながら人間的成長を実現させる。そしてPBを終えて社会に出たときには大きく飛躍する。そうした実績を積み重ねていく必要がある。

5 おわりに

 意思決定には納得感が重要である。PB制度は自分の属する世界を変えながら新たな挑戦を可能にする制度だ。挑戦を通じて得た価値観をキャリアメンターと共有しながらさらに新たな、次の価値観を発見する。こうして納得感をもって自分のキャリア形成をしていく。納得感があれば、自分の思う生き方、大切にしたいことを信じることができる。これまでは流されてきた固定観念やドグマをきっぱりと捨て去ることができる。こうして成長した「流されてきた大学生」が様々な挑戦を繰り返し周囲の人間の世界も変えていく。そんな未来をPB制度は実現できると思う。

 

参考文献
1)2014年大学生の意識調査、全国大学生活協同組合連合会、2015年4月(http://www.univcoop.or.jp/press/mind/report-mind2014.html
2)伊藤茂樹、大学生は「生徒」なのか―大衆教育社会における高等教育の対象―、駒澤大学教育学研究論集第15号、1999年(http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/15869/KJ00005099249.pdf)
3)2017年卒マイナビ大学生就職意識調査、株式会社マイナビ、2016年4月(http://saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/ishiki/)
4) 新規学卒者の離職状況、厚生労働省、2015年10月(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11652000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Jakunenshakoyoutaisakushitsu/0000102407.pdf)
5) 第8回全国院生生活調査、全国大学生活協同組合連合会、2014年(http://www.univcoop.or.jp/activity/wa-master/wa-master03.html)